念願だったミクローシュ・ペレーニの
J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲 全曲演奏会へ。
至福の2日間だった。
【1日目】 2015.12.4(金)
第1番 ト長調 BWV1007
第5番 ハ短調 BWV1011
第4番 変ホ長調 BWV1010第1番、淡い花びらのようなプレリュードから始まった。
あまりの優しさに「こんなプレリュードがあるのか」と驚かされた。
飾ることなく淡々と、
けれど強弱・スピードを繊細に変化させて曲を見事に紡いでいく。
ペレーニさんのバッハは彼の日常を覗かせてもらったと言う感じだった。その日常を聴かせるという事がいかに困難で不可能な事か!信じられないバッハだった。無添加でバッハの素材そのまま。と、チェリストの山本裕康さんもツイッターで呟かれていたが、
難しさを感じさせない自然さを目の前にして、まるでペレーニ氏の自宅の一室で演奏を聴いているかのような錯覚に陥る。
天井から降り注ぐ清廉な音色に魂が浄化されるよう。
重音和音がまるで一つの音のように美しく澄み、染みていく。
正確無比な弓は弦の上を0.1mmのぶれもなく、
白鳥が湖面を滑るように動いていく。
コントロールという言葉さえ当てはまらないほど、
当たり前のように弓元から弓先まで、弓先が弦を離れる瞬間まで放たれる誠実な音色。
一音一音を慈しむように紡ぎだしたり、
民俗的な素朴さ、温かさを差出したかと思うと、
一気に集中し、カッと目も見開き、射抜くようなまなざしを向ける一瞬もあった。
アンコール
第3番 1.プレリュード
第6番 2.アルマンド演奏が終わった後の穏やかな表情、気品に満ちたお辞儀、
何もかもが素晴らしかった。
舞台袖へ歩いていくペレーニ氏は、青年のように見えた。
【2日目】 2015.12.6(日)
第2番 ニ短調 BWV1008
第3番 ハ長調 BWV1009
第6番 二長調 BWV1012ペレーニ氏はほとんど目を瞑って演奏されていた。
時折、閉じた目のまま
「そう、この部分が好きなんだよ」
とでもいうように、閉じた目のまま、優しい嬉しそうな表情を見せたのが印象的だった。
音色は2番3番と進むごとに深さと輝きを増していく。
弓と一体化した右腕の動きに息をのみ、
指板を叩く左手の四角い指先から弾き出る、光沢のある音に目を見張り、
組曲全体が物語のように構築されている様に見惚れていた。
輝かしい時間はあっという間に過ぎてしまった。
アンコール
第1番 2.アルマンド
第4番 5.ブーレ
アンコールで少しお疲れが見えたようにも感じたが、
演奏後のサイン会では疲れた顔一つ見せず、一人一人にとても丁寧なサインをして下さっていた。
書いてくださった文字も芸術作品のよう。
コンサートの音楽も、
いただいたサインも、一生の宝物だ。
ペレーニ氏と同じ時代に生まれてコンサートを聴けたことを心から感謝している。
J.S.バッハ : 無伴奏チェロ組曲全曲 / ミクローシュ・ペレーニ (2019年録音) (J.S.Bach : Six Solo Cello Suites / Miklós Perényi, Recording 2019) [2CD] [Import] - ミクローシュ・ペレーニ, J.S.バッハ, ミクローシュ・ペレーニ