2013年03月06日

シプリアン・カツァリス ピアノリサイタル

“鍵盤の魔術師”フランスの世界的なピアニストで作曲家、
シプリアン・カツァリスのリサイタルに行ってきました。

まず最初に、お誘いくださった方にメッセージを。
ご縁をいただきまして、誠にありがとうございました。


2013年3月3日(日)
茅ヶ崎市民文化会館 大ホール

舞台上手から颯爽と登場したカツァリス氏。椅子に座ると同時にさらりと弾きだした。
プログラムでは一曲目はハイドンと印刷されていたのだが、始まったのは全くちがう曲。それは “春の夢”を表現したかのような即興演奏だった。
ゆるやかに中音部をたゆたう、シルクの衣擦れを想像させるメロディー。
高音部の美しさときたら、まさに “羽の生えた魔法の指”で、プログラム前だというのにもう目が潤みそうになった。
なのになのに御大ときたら、最後の一音を何の勿体もつけずに
「はい、これでおしまいだよ!」
と言わんばかりに

ターーーーーーーーーーン…!

と鳴らした勢いをそのままに右手を高く上げ、
立ち上がって一礼。

「ちょっとした指鳴らしにね」

そんな表情で観客に向けて、にっこりと微笑んだ。


前半プログラムは小品で。

■ハイドン:クラヴィア・ソナタ ハ長調 Hob.XVI,35
■モーツァルト:幻想曲 K.396、K.397
■シューベルト/リスト:3つの歌曲 セレナーデ、水車職人と小川、アヴェ・マリア、
■ショパン:夜想曲 op.9-1、ポロネーズ 第3番「軍隊」 op.40-1

数ヵ所危ないところもあったが、どの曲も超絶技巧で軽々と。


休憩をはさんで後半は、一人でピアノ協奏曲を弾く挑戦的なプログラム。

■ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
 (カツァリス編曲ソロバージョン)

ピアノの特性を手中に収め、コントロールの行き届いたタッチとペダリングから明快な音が生み出される。右手と左手、たった2本、10本の指から、幾つものメロディーラインと複雑な和音が縦横無尽に走り出て、時に交差し、時に寄り添いながら突き進んでいく。オーケストラを一台のピアノだけで表現する。さすがに最後の盛り上がり部分で低音が鳴り響く辺りは、ピアノ一種類の音だけでは厳しいものを感じたが、それでもよく耳を凝らして聴いていると、音と音がぶつかることなく整然と波打っていることに気付かされた。


*** アンコール曲 ***

■即興曲~さくらのイメージで~

不思議な和音から始まったアンコール曲。「あれ?月の光?」と思ううちに音が揺らぎ、どこからともなく“さくらさくら”の旋律が現れて、月明かりにうす白く照らされた桜の情景が見え始める。
群れ咲く桜花のすさまじさ。
ひらりひらりと花びらが散っていたかと思うと、一陣の風が花びらを舞い上げていく。
情景が、音という映像で映し出されていく。
桜の木の下を、花に酔いながら歩いていくうちに、
月が隠れ、
あたりは漆黒の闇に包まれる。

■マルチェッロ オーボエ協奏曲より 第2楽章

世界は一変、光を帯びた白い色に。“真珠の玉がころがるような”と表現されている方がいたが、実に的を得ていると思う。
カツァリス氏の両手の上に、キラキラと淡い虹色に輝く真珠があふれ出て、それもう言葉で表現できない美しさだった。


カツァリス氏は時折、オーケストラを指揮するように左手を上げてふわりと動かしたり、客席に向かって余裕の笑顔を見せたりしながら、始終、すっと背筋を伸ばし、無駄な力を一切使わず弾ききりました。
ビブラートのかかったピアノの音が存在するなんて、思いもよりませんでしたよ。
奏法を表す(テヌートなどの)記号が目の前にチラチラ見えるし。
失礼な表現かもしれないけど、YAMAHAのピアノであれほどの作品が作られるとは驚きでした。

初めての生カツァリス、
素晴らしかったです。
また聴きたい。
画像

演奏後の疲れも見せずにキュートな笑顔でサイン会。

最後に、インタビュー記事で印象に残ったものを転載させていただきます。
----------ここから転載----------
演奏で大切なのは、間違えずに早く弾くことではなく、音楽的感情のコミュニケーションです。音楽の大家は聴衆とコミュニケーションをとれる人。聴衆が退屈しないように彼らから何かを感じ取り、心を揺さぶることが音楽家の使命です。音楽家はワンパターンであってはならず、真心で演奏しなければなりません。ワンパターンは愛情の欠如ですから、そうならないために絶え間なく愛情そして音楽を再生しなければなりません。  

私たちは乱れた世界に住んでいます。1985年、原爆投下から40年という年に広島を訪れてそう思いました。だからこそ、芸術や音楽が必要なのです。医師が病人に薬を処方するように、日常での心配事を忘れるため、精神的に上昇するため、苦しんでいる人を慰めるため、力を貸すのが芸術家や音楽家の役目なのです。  

私の目標は常に、演奏を聴いてくださる方が幸せな気持ちになるような、日常の問題を忘れられるような演奏ができるようにピアニストとして演奏の質を改善することにあります。

----------転載おわり----------


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★リンク集
シプリアン・カツァリスのファンサイト

インタビュー記事がどれも面白い。

今回のリサイタルそれぞれの曲についての感想はこちらのブログ記事が読みやすかった。

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ラベル:コンサート
posted by しるくら at 16:01| Comment(1) | TrackBack(0) | チェロ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Posted by しるくら at 2013年03月11日 10:05
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